こんにちは。
ラブキモノ刺繍の鈴木ひろ美です。
ミシン刺繍フェスティバルやお茶会などで、
「編集しようと思ったら動かせないデータがあります」
「図形データとステッチデータって何が違うんでしょう?」
というご質問を時々いただきます。
ブラザーpesの拡張子の刺繍データ、同じようなデザインに見えても、“編集できるもの”と“できないもの”があるのは不思議ですよね。
実はこれ、刺繍データの種類と作られた環境などが関係しているんです。
● 編集できるデータと、できないデータの違い
刺しゅうプロ11で作ったデータは、後から変更できる“編集可能なデータ”として保存されます。
しかし同じ刺しゅうプロでも、刺しゅうプロのデザインライブラーから取り込んだデータで、黒い四角の点々で囲まれた刺繍データは、編集ができないデータです。(拡大縮小は出来ますが…)
このデータはステッチデータになっています。
① ステッチデータ(刺繍データ/マシンデータ)
✔ 完成形として書き出される “最終データ”
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.pes / .phc / .dst など、各ミシンがそのまま読める形式。
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すでに針落ち(ステッチ)の位置がすべて確定している“縫うだけデータ”。
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1針ごとの座標が並んでいるだけの情報なので、形の編集(大幅な修正)やステッチ自体の作り方の変更はほぼできない。
✔ 編集できる範囲はごく一部
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拡大縮小(多少ならOK)
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縫い順変更
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色の変更

こちらは刺しゅうプロのデザインライブラリーか取り込んだpesの刺繍データ。
取り込んだ時に、黒い四角の点々で囲まれています。

ポイントの編集をしようとすると、全部が点々の針落ちポイントのみで表示されます。
これがステッチデータです。
料理で例えると「完成済みのお弁当」。
味を変えたり、別の調理法に変えたりはできない状態です。
② ブロックデータ
✔ 刺しゅうPRO の編集画面に残る “設計図データ”
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どんなステッチで縫うか(タタミ・サテン・走りなど)
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方向線や下打ち、密度、開始点/終点の位置
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重なり削除の有無、角の処理(尖らせる/丸める)
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図形ツールやポイントツールで描いた線の形そのもの
これらすべてを保持した状態の “元データ” です。
✔ あとから自由に編集できる
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形の修正
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ステッチタイプの切り替え
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方向線の追加/変更
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下打ちの調整
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糸切りの設定
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縫い順の見直し
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サイズ変更しても破綻しにくい
つまり 刺繍データを作るための素材そのもの です。

これは「丁寧の覚えるマニュアルパンチ①」のオンライン講座で生徒様にお配りしている教材pesデータ。

ポイント編集ツールでクリックすると、ぬい方向や密度なども変更できるようになっています。
これがブロックデータです。
料理でいうと「食材+レシピ」。
あとから味付けや調理法を変えられる状態です。
▶ ステッチデータは後から直せない
「ここだけサテンに変えたい」「方向線を直したい」などは不可能。
▶ ブロックデータはぜったいに残しておく!
自分で作ったデータを後日修正したい時、ブロックデータが残っていないと、最初から作り直しなんてことも…。
▶ 市販データはほぼステッチデータのみ
(販売されている刺繍データが編集しづらい理由はこれ)
● なぜ刺しゅうプロのデザインライブラリや、販売データはステッチデータが多いの?
理由はいくつか考えられます。
まず、刺しゅうプロのデザインライブラリ。
多分ここにあるデータは、以前のバージョン作ったでデータなども載せている、もしくは他のソフトを使って作っているなどを推察しますが、どうでしょうね?
さらにステッチデータを扱う大きな理由として、
ミシンメーカーごとに拡張子(形式)が違うため、多くの場合ステッチデータとして書き出される
という仕様だからです。
たとえば、ブラザー・ジャノメ・ハスクバーナ・ベルニナ…それぞれで拡張子が違います。
編集可能なデータのままでは他メーカーの刺繍機で読めないため、メーカーをまたいで使える“ステッチデータ形式”で書き出されるのです。
あとは、制作者のノウハウを守るためとも考えられます。
設定が丸見えになる編集データをそのまま公開すると、技術がすべて見えてしまいます。
そのため、作り手は元の編集可能データを自分用に残し、販売はステッチデータ(.pesなど)で提供するという流れが一般的です。
刺繍データには、
「編集できる・できない」の前に、そのデータがどんな環境で作られ、どのミシンで動くように作られたのかという背景があります。
こうした仕組みを知っておくと、データを見るときの理解度がぐっと深まりますよ。
♡♡♡
丁寧に覚えるマニュアルパンチ①(刺しゅうPRO11)はこちら
